~細胞の成長スイッチ“TORC1”が活性化する仕組みの解明~

 大阪大学大学院生命機能研究科博士後期課程(研究当時)のZeng Qingzhongさん、口腔科学フロンティアセンターの荒木保弘助教野田健司教授らの研究グループは、アミノ酸の一種システインがPib2タンパク質に結合し細胞を活性化することを初めて明らかにしました。
 細胞はアミノ酸などの栄養源の存在を感知し、TORC1と呼ばれるタンパク質キナーゼ複合体が活性化し、タンパク質や脂質の合成を促進することで細胞が増殖します。一方、栄養が無くなるとTORC1が不活性化し、オートファジーなどの分解過程がはじまります。これらのことよりTORC1は細胞成長やオートファジーに関するスイッチのように働くと考えられています。
 これまで酵母では、生体内で利用される20種類のアミノ酸がどのようにTORC1を活性化するかについては詳細に解明されていませんでした。
 今回、研究グループは、様々なアミノ酸のTORC1への影響する経路を分析することにより、システインがPib2タンパク質に直接結合し、TORC1を活性化することを解明しました。これにより、アミノ酸がどのように細胞に利用されるかの理解が深まることが期待されます。
 本研究成果は、米国科学誌「Cell Reports」に、日本時間 12月21日(木)に公開されました。

タイトル:“Pib2 is a cysteine sensor involved in TORC1 activation in Saccharomyces cerevisiae”
著者名:Qingzhong Zeng, Yasuhiro Araki, Takeshi Noda
DOI: https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.113599