口と全身の関係を解き明かす科学的根拠に基づいた治療を追究

 大阪大学歯学部は、歯科医療のスペシャリストを育てるとともに、歯と関連の深い口や顔、さらに脳、ひいては人のからだ全体を科学の目で見ることのできるオーラルヘルス・サイエンティストの育成にも力を入れています。

 歯学部といえば虫歯や歯周病(歯槽膿漏)の治療や、入れ歯を作るという技術的なことが教育の中心になっているとお考えではないでしょうか。確かに腕の良い歯科医師を養成する場であることはいうまでもありませんが、現代の歯科医療に求められているのは、医学の世界と同様に、科学的に明確な根拠に基づいて歯科治療を行うことです。すなわち、虫歯や歯周病などの歯科治療は、経験則に従うのではなく、病気の発症メカニズムを理解し、その原因を明らかにした上で行う必要があります。また、歯は口の中にあるので、歯科治療には、口やあごの機能、さらにはそれらを動かす脳の機能まで知る必要があります。

 最近では、歯の病気と生活習慣病との関連が指摘されています。また、高齢化社会となって、歯の健康が高齢者の生活の質に深く影響していることも分かってきました。このように、歯がからだ全体の健康に及ぼす影響にも焦点を向けて研究や治療がすすめられています。




国立総合大学で最初の歯学部、研究の活発さも全国一

 大阪大学歯学部は、1926(大正15)年、大阪大学医学部の前身である大阪府立医科大学に歯科学教室が設置されたのが源流です。1950(昭和25)年、大阪大学医学部歯学科として設置され、翌年に国立総合大学では最初の歯学部として創設されました。創設以来半世紀を超える歴史を重ね、大阪大学歯学部は国際的にも有数の歯学教育・研究診療期間へと大きく発展してきました。
 大阪大学歯学部には、基礎歯科学と臨床歯科学の2つの分野があります。基礎歯科学は歯科医療の基礎となる医学領域を扱っています。臨床歯科学は直接患者さんの医療に適用できる学問です。一方、歯学部で大きな位置を占めている附属病院があります。附属病院には様々な臨床歯科学に対応した治療部門(診療科)があり、学生はここで基礎歯科学、臨床歯科学で学んだ知識をもとにして、実際に歯科医療に関する指導を受け、実習を行います。

 目覚ましい科学の進歩とともに歯学部の研究も分子レベルから人間の行動変化に至るまで広い範囲に及んでいます。大阪大学歯学部は全国の歯学部、歯科大学の中で最も活発に研究をし、欧文論文を発表しているところです。極めて多岐にわたる研究の雰囲気になれるため、3年次には基礎配属実習※としてすべての学生が実際に研究者と一緒になって研究を行う機会を設けています。大阪大学歯学部は歯科を技術中心とした医療とは考えず、一般医学に基礎をおいた口腔科学、口腔医療として理解することを強く意識しています。


基礎配属実習  全ての基礎科目が修了する3年次の11~12月に、それら科目の総仕上げとして行われる実習。全ての学生は、歯学部基礎科目9教室に分属し教員の指導下で研究活動を体験する。