~軟骨遺伝子疾患の病態メカニズム解明に期待~
生化学講座大学院生の小林(一山)紗知さん(現在は顎口腔腫瘍学講座)、波多賢二准教授、西村理行教授らの研究グループは、軟骨細胞に重要なSox9遺伝子の発現を制御するゲノム領域を発見し、骨格形成における重要性を解明しました。
SOX9遺伝子は軟骨細胞の分化に必須の転写因子※2です。そのためSOX9遺伝子の変異は、先天性骨軟骨形成異常症(キャンポメリックディスプラシア)やピエールロバン症候群などの遺伝性骨系統疾患の原因となります。
SOX9遺伝子が働くためには、”エンハンサー”と呼ばれるゲノム領域によって転写※3のスイッチがオンとなり、遺伝子が発現する必要がありますが、これまで軟骨細胞でのSOX9遺伝子エンハンサーと骨格形成における役割は不明でした。
今回、本研究グループは、軟骨細胞のゲノムDNAを用いた次世代シークエンサー解析と、ゲノム編集技術を応用したマウス発生工学技術を駆使することで、軟骨細胞でのSox9遺伝子発現に重要なエンハンサーとその制御機構を明らかにしました。エンハンサーはSox9遺伝子から160kbおよび308kb離れたゲノムに存在し、協調作用により軟骨細胞分化と骨格形成を制御していました。
この発見により、SOX9遺伝子が原因の軟骨遺伝子疾患の病態解明が進むと期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「JCI Insight」に、6月11日(火)午前2時(日本時間)に公開されました。
タイトル:“Chromatin profiling identifies chondrocyte-specific Sox9 enhancers
important for skeletal development”
DOI: https://doi.org/10.1172/jci.insight.175486.