教室からのメッセージ

「よりよい薬物療法」 の開発はQOL ( 生活の質) の向上に大きく貢献します.薬理学教室では,主に中枢神経系疾患を対象とする疾患モデル動物での病態発現機序の解明を通して,よりよい薬物療法の開発と新たな薬物治療への応用を目指した研究・教育に取り組んでいます.


スタッフ

職名氏名E-mail(@以下はosaka-u.ac.jp)
教授田熊 一敞takuma.kazuhiro.dent@
准教授早田 敦子hayata.atsuko.dent@
助教岩橋 美咲iwahashi.misaki.dent@

教育内容

 学部教育では薬理学を担当しています.薬理学の最終目的は,薬物によるヒトの疾患の治療であり,実際の医療現場において,それぞれの症例に応じた適切な処方を行う上で極めて重要な役割を果たしています.したがって授業では,薬物療法の基本原理を充分に学習し,そして疾患の病態生理と個々の薬物の作用機序から目的作用や有害作用を論理的に理解できる能力の養成,すなわち臨床応用へ繋がる科学的思考力の修得を目指しています.

 大学院教育では,神経科学を基盤とした薬理学を通して,高度な論理的思考能力を持つオーラルヘルス・サイエンティストの育成を目指しています.


研究の概要

1.胎生期・周産期の母体環境要因による発達障害の病態分子基盤と新規薬物療法

 薬理学講座では,「胎生期・周産期の母体環境要因」が出生児の精神発達に及ぼす影響について研究を進めており,なかでも,妊娠中の抗てんかん薬服用が出生児において発達障害の1つである自閉スペクトラム症 (ASD) の発症リスクを増大させるという臨床知見 (図1) に着目して研究を進めてきました.これまでに,代表的抗てんかん薬であるバルプロ酸 (VPA) を投与した妊娠マウスより出生した仔におけるASD様異常行動の発現と脳の器質的変化を見いだし,ドパミン神経系標的薬やオキシトシン (図2) によるASDの新たな薬物治療の可能性を報告しています.中枢神経系疾患のみならず,環境要因による病態発現機序の解明を基にした新たな概念からの分子標的化によって,これまでにない薬物治療ストラテジーの開発を目指しています.

図1. 胎生期および周産期の母体環境は出生児の精神発達に影響を及ぼす.
図2.オキシトシンの経鼻投与はASDモデルマウスの社会性行動の減少を改善する.

2.生活習慣病と孤発性Alzheimer病を結ぶ病態分子基盤

 認知症の主要原因である孤発性Alzheimer病 (AD) において,糖尿病,高血圧や高脂血症などの生活習慣病が危険因子であることが示されているが,これらを結びつける病態分子基盤については未だ不明である.薬理学講座では,生活習慣病モデルとくに糖尿病モデルを用いて,“生活習慣病から孤発性AD発症に至る分子機序”を解明することを目指しています.