細菌間栄養ネットワークを介した歯周病発症メカニズムを解明

―代謝物を標的とした新たな歯周病予防法の開発に期待―

口腔分子免疫制御学講座(予防歯科学)の坂中哲人助教、久保庭雅恵准教授、天野敦雄教授、工学研究科の新間秀一准教授、福崎英一郎教授(生物資源工学)らは、ルイビル大学(米・ケンタッキー州)との国際共同研究によって、口腔バイオフィルムにおけるフソバクテリウム(Fusobacterium nucleatum)を中心とする細菌間栄養ネットワークを介した歯周病発症メカニズムを明らかにしました。

歯周病は歯周ポケット内の細菌(そう)においてPorphyromonas gingivalisなど数種類の歯周病菌が増加することが引き金となり発症すると考えられていますが、その過程で他の口腔細菌がどのようにP. gingivalisを栄養的にサポートするかについては十分に解明されていませんでした。

今回、本研究グループは、実験的な手法とヒト被験者の歯垢(口腔バイオフィルムの一種)を用いた解析を組み合わせ、F. nucleatumStreptococcus gordoniiなどの初期定着菌から供与されたアミノ酸を利用してポリアミンを産生し、それがP. gingivalisのバイオフィルムの生活環※2を加速させることで、歯周病発症に関与することを解明しました。これにより口腔バイオフィルム内でのcross-feeding※3を介した細菌間栄養ネットワークを制御することで、新たな歯周病予防法の開発が期待できます。

本研究成果は2022年7月19日(現地時刻)に米国科学誌「mSystems」にオンライン掲載されました。