-ヒト多能性幹細胞で骨組織を再現し骨発生過程に寄与する転写因子群を解明-

口腔解剖学第一教室の大庭伸介教授(研究当時:東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター准教授、長崎大学生命医科学域(歯学系)教授)、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座の谷彰一郎研究員(日本学術振興会特別研究員)・田中栄教授、東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センターの北條宏徳准教授・鄭雄一教授、米国コネチカット大学のDavid W. Rowe教授をはじめとする国際共同研究グループは、ヒト多能性幹細胞から作製した骨組織を用いて骨発生過程に寄与する重要な転写因子群を解明しました。

主にマウスを用いた研究手法によって、骨発生過程において重要な複数の転写因子が明らかにされてきましたが、細胞種ごとに異なる転写因子同士の関係性やヒト骨組織での検証は今まで十分ではありませんでした。本研究グループは、ヒト多能性幹細胞を用いた骨発生過程の再現と次世代シークエンサー(next-generation sequencer: NGS)を用いたシングルセル解析※1(scRNA-seq※2およびscATAC-seq※3を融合した最新のscMultiome解析※4)を駆使することで、ヒト骨発生過程における様々な転写因子の組み合わせ(転写制御ネットワーク)の一端を明らかにしました。本結果は、ヒト骨発生のメカニズムや骨系統疾患の病態理解への寄与と新たな治療標的の発見や治療戦略の確立へと発展することが期待されます。

本研究成果は、2023年3月24日午前11時(米国東部時間)に米国科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。