~病気の原因遺伝子の役割を解明~

 顎顔面口腔病理学講座の廣瀬勝俊助教豊澤悟教授、本学大学院医学系研究科の堀由美子招へい教員、森井英一教授、岐阜大学大学院医学系研究科の小関道夫准教授らの研究グループは、ヒト静脈奇形検体を用いて、静脈奇形の発症にかかわる原因遺伝子の違いにより臨床症状や顕微鏡像が異なること、原因遺伝子の種類にかかわらずPIK3CA(PI3K)/AKT/mTOR経路が活性化していることを見出しました。
 これまでの研究で、静脈奇形の発症原因としてTEK遺伝子とPIK3CA遺伝子の異常が関わっていることがわかっていましたが、それらの役割はよくわかっていませんでした。今回、研究グループは、次世代シーケンサーを用いた遺伝子異常解析や空間的トランスクリプトミクス解析という最新の研究技法を用いて、静脈奇形の「原因遺伝子」「RNA」「蛋白質」「臨床症状」「顕微鏡像(病理所見)」を包括的に観察することに成功しました。
 本研究成果は、静脈奇形の初の治療薬であるmTOR阻害薬シロリムスの治療根拠となることや、新たな治療薬開発へつながることが期待されます。また、臨床症状や顕微鏡像の特徴から、遺伝子検査が困難な施設においても、原因遺伝子に応じた適切な治療薬が使用できることが期待されます。
 本研究成果は、蘭国科学誌「Human Pathology」に、2月15日(木)(日本時間)に公開されました。

タイトル:“Comprehensive phenotypic and genomic characterization of venous malformations”
DOI:https://doi.org/10.1016/j.humpath.2024.02.004