~医科歯科連携のさらなる促進に期待~
当研究科の大学院生の井上 萌さん(博士課程、日本学術振興会特別研究員DC1)、久保庭雅恵教授、大阪大学大学院医学系研究科 片上直人講師、西澤均准教授、下村伊一郎教授、大学院工学研究科 福﨑英一郎教授らの研究グループは、糖尿病集中治療のみで歯周病の炎症状態が改善すること、また、糖尿病治療前の全身状態によって糖尿病集中治療に伴う歯周組織の反応性が異なることを明らかにしました。
これまでの研究で、糖尿病と歯周病は相互関係にあり、歯周病治療により血糖コントロールが改善することが明らかになっています。しかし、糖尿病治療による歯周病への影響についてはほとんど解明されていませんでした。
今回、研究グループは、2型糖尿病患者に対し、入院下での糖尿病集中治療を行い、糖尿病治療前後の全身的な臨床指標や歯科的指標を計測し、詳細に解析しました。その結果、糖尿病治療により、血糖コントロールだけでなく、歯周病の炎症状態の指標であるPISAも改善することを明らかにしました。さらに、PISAの改善には、糖尿病治療前のインスリン分泌能や糖尿病合併症や併発症の重症度が関与していることも明らかになりました。これらの結果から、糖尿病患者における歯周病の改善には、早期の糖尿病への介入が重要であることがわかりました。
この研究により、糖尿病と歯周病の相互関係のメカニズムの解明、糖尿病初期からの医科歯科連携が促進されることが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Diabetes, Obesity and Metabolism」に、8月15日(木)14時(日本時間)に公開されました。
タイトル:“Periodontal Tissue Susceptibility to Glycemic Control in Type 2 Diabetes”
著者名:Moe Inoue, Akito Sakanaka, Naoto Katakami, Masahiro Furuno,
Hitoshi Nishizawa, Kazuo Omori, Naohiro Taya, Asuka Ishikawa,
Shota Mayumi, Emiko Tanaka Isomura, Hiroki Takeuhi, Atsuo Amano,
Iichiro Shimomura, Eiichiro Fukusaki, Masae Kuboniwa
DOI:http://doi.org/10.1111/dom.15835
なお、本研究は、AMED課題番号A154〈JP22ym0126809〉、科学研究費補助金22H03300、21K18281、20K18827、23KJ15250の支援を受け、大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科(下村研)、同工学研究科生物工学専攻メタボロミクス研究室(福﨑研)との共同研究により実施されました。