
大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科では、全身麻酔、鎮静法、MAC(Monitored Anesthesia Care)、口腔顔面領域のペインクリニックを行っています。また院内で発生した歯科治療に伴う全身的偶発症の初期対応も担っています。

【全身麻酔】
口腔外科の手術や障害者の歯科治療などの全身麻酔を担当しています。当科での症例の特徴は、口唇口蓋裂に対する小児麻酔件数が多いことです。また、口腔癌の手術では再建術も含めて10時間を越える麻酔管理を要することもあります。
歯科治療および小手術の全身麻酔では、日帰り手術や1泊入院でも行っています。また鎮静法で対応できないような、異常絞扼反射の強い患者や歯科治療に対する不安・恐怖などが強い患者の全身麻酔も行っています。



【鎮静法】
歯科治療に対する不安、恐怖心が強かったり、異常絞扼反射があるなど、通法での歯科治療が困難な患者に対して、快適で安全な歯科治療を提供する方法として鎮静法があります。鎮静法は患者の治療に対する不安感、恐怖心を和らげ、また異常絞扼反射を抑制することができます。鎮静法には低濃度の亜酸化窒素ガスの吸入による吸入鎮静法や、鎮静剤を静脈内に投与する静脈内鎮静法があります。歯科治療のための鎮静法では、全身麻酔と異なり、基本的に患者の意識は保たれます。ほかにもインプラント手術に静脈内鎮静を併用することで、インプラント手術中のストレスを軽減することも可能です。

【リスク患者の管理(MAC)】
全身疾患を有する患者の歯科治療の際には、緊張や痛みなどが引き金となって、全身疾患が悪化したり、合併症を引き起こすことがあります。歯科麻酔科では、各科主治医からの依頼を受け、全身疾患を有する患者の歯科治療の際に、血圧、脈拍、心電図、酸素飽和度などをチェックし、必要に応じて介入することで合併症の予防に努めています。万が一、歯科治療中に合併症が生じてもすぐに対処できるように体制を整えています。また近年、局所麻酔薬に過敏に反応する患者が増加しています。そのような方に対しては、安全に局所麻酔を用いた治療を行っていただけるよう、事前に局所麻酔のアレルギー検査(自費)も行っています。
【ペインクリニック】
口腔顔面領域における疼痛や運動麻痺、感覚障害などの異常(三叉神経痛、顎関節症、帯状疱疹後神経痛、癌性疼痛、抜歯後痛、抜髄後痛、顔面神経麻痺、顎骨骨切り術後感覚障害、抜歯後感覚障害、舌痛症、原因不明の疼痛や違和感など)に対して、治療を行っています。症状や疼痛の原因となる疾患、患者の希望と照らし合わせて、星状神経節ブロックや疼痛部位への神経ブロック、近赤外線レーザー照射、各種薬物療法を行っています。星状神経節ブロックとは、頸部にある交感神経節に局所麻酔を行い、交感神経を遮断することで顔面の血行を一時的に促進させ、症状の回復をはかる治療法です。また、当科には鍼灸師も在籍しており、鍼灸や漢方などの東洋医学的治療も行っています。このように歯科麻酔医と鍼灸師が連携して、西洋医学と東洋医学の両方からアプローチすることで、口腔顔面領域の疼痛に対して多角的に治療を行っています。

【院内救急対応】
歯科治療中の気分不良や、持病の悪化など、院内の各診療科で歯科治療中に発生した緊急事態に対して歯科麻酔医が駆けつけ、初期対応等の救急処置を行っています。また、一次救命救急処置(BLS)の院内講習会を定期的に開催することで、病院職員の救急対応能力の向上を図っています。
