1. 研究の対象
大阪大学歯学部附属病院顎口腔腫瘍外科学講座(口腔外科学第二教室)で「顎口腔腫瘍のゲノム・エピゲノム解析による病態解明」に同意された患者さんの、病理組織検査で使用しない余剰検体や血液検体を研究のために使用します。対象の病気は顎口腔領域に発生した腫瘍性病変です。
2. 研究の意義
あごの骨の中や口の中にはさまざまな腫瘍性病変が発生します。悪性腫瘍としては舌癌などの口腔癌が最も多く、唾液腺に癌が発生することもあります。また、良性腫瘍としては、歯に由来する腫瘍の1つであるエナメル上皮腫が比較的多く、極めてまれな線維骨病変などもあり、病理組織学的にも分類が困難な病変も多数存在しています。
次世代シークエンサーを用いた網羅的解析は、様々な疾患や癌腫でその本態解明に大きく寄与し、これにより新たな治療薬が次々と開発されています。しかし、顎口腔腫瘍の多くは、分子発生機序や遺伝子発現変化の病態への関与などがほとんど解明されていません。中でも口腔癌は予後不良な癌腫であるにも関わらず、その希少性から解析は十分になされておらず治療薬も限られています。本研究は、口腔癌を中心とした顎口腔腫瘍症例を対象に、最新の解析手法を駆使した網羅的解析を行い、顎口腔腫瘍の本態解明を行うことを目的とします。これらの知見は顎口腔腫瘍の予後を改善しうる新規創薬開発や治療層別化に有効となる新規バイオマーカーの同定にも重要であり、極めて高い臨床的意義を有します。
3. 研究の目的・方法
次世代シークエンサー等を用いた網羅的解析を行うことで、本邦における顎口腔腫瘍の分子遺伝学的特徴を明らかにします。血液検体に加えて、手術の余剰検体より得られた腫瘍組織と正常部位を解析に追加することで、その腫瘍の本態解明を詳細に明らかにします。また、口腔癌の発癌要因として飲酒や喫煙が知られていますが、本研究ではゲノム解析のみならず生活習慣の調査を行い、ゲノム情報と統合することでこれら発癌因子によって加速される口腔癌の発癌メカニズムや自然史に与える影響をゲノムレベルで解明していきます。
本研究は国内2施設との共同研究で、主に、大阪大学や国立がん研究センターに設置されている次世代シークエンサー、もしくは次世代シークエンス解析技術を持つ第三者に委託して解析を行います。通常の顕微鏡などによる病理組織検査に支障を来さない場合のみ、凍結組織は採取されており、それを使用します。研究実施期間は5年間です。あなたの遺伝子解析データは、研究用にデータを提供する公共のデータバンクであるがんゲノム情報管理センター(C-CAT、国立がん研究センター 研究所に設置)やNational Bioscience Database Center(NBDC)を介してDDBJ(DNA Data Bank of Japan)等に匿名化のもと将来的に提供され、厳正な審査を受けて承認された場合のみデータが利用される可能性があります。
4. 研究に用いる試料・情報の種類
情報:病歴 等
試料:外科手術や生検で摘出した組織、血液検体 等
5. 研究組織
鵜澤 成一(大阪大学 大学院歯学研究科 顎口腔腫瘍外科学講座(旧口腔外科学第二教室))
谷内田 真一(大阪大学大学院 医学系研究科 医学専攻 ゲノム生物学講座・がんゲノム情報学)
柴 知史(国立がん研究センター 研究所 がんゲノミクス研究分野)
6. 問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記連絡先までお問い合わせください。
ご希望があれば,他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。また、資料・情報が当該研究に用いられることについて、患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出下さい。この場合も患者さんに不利益が生じることはありません。
研究責任者:
大阪大学 大学院歯学研究科 顎口腔腫瘍外科学講座 鵜澤 成一
研究代表者:
大阪大学 大学院歯学研究科 顎口腔腫瘍外科学講座 鵜澤 成一
照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
大阪大学 大学院歯学研究科 顎口腔腫瘍外科学講座 柏木 孝文
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-8
FAX 06-6879-2170 TEL 06-6879-2941