顎顔面口腔病理学講座の廣瀬 勝俊助教、豊澤 悟教授、大学院医学系研究科の堀 由美子招へい教員、森井 英一教授らの研究グループは、ヒト動静脈奇形検体を用いて、特定の原因遺伝子異常の有無により臨床症状や顕微鏡像が異なること、遺伝子異常の有無に関わらずRAS/RAF/MEK経路が活性化していることを見出しました。さらに病気の形成に関与する候補因子群を特定しました。
動静脈奇形は動脈の構造異常であり、出血や血管周囲組織の破壊を繰り返す難病です。これまでの研究で、動静脈奇形の発症原因としてRAS/RAF/MEK経路に関連する遺伝子の異常が関わっていることがわかっていました。しかし、その遺伝子異常がどのように病気を引き起こすかという具体的なメカニズムについては、未解決のままでした。
今回、研究グループは、ナイダス(動静脈奇形の本体とされる異常なつながり)に着目し、動静脈奇形の病態を解明しました。次世代シークエンサーを用いた遺伝子異常解析や空間的トランスクリプトミクス解析という最新技法を用いて、動静脈奇形の「原因遺伝子」と「RNA」「蛋白質」「臨床症状」「顕微鏡像(病理所見)」との関連性を明らかとしました。本研究成果は、MEK阻害薬の治療根拠となることや、そのほかの新たな治療薬開発へとつながることが期待されます。本研究成果は、欧州病理学会公式科学誌「Virchows Archiv」に、7月2日(水)(日本時間)に公開されました。
タイトル:“Pathogenic Mechanism of Extracranial Arteriovenous Malformations: Insights from Clinical, Pathological, and Genetic Analyses”
著者名:Katsutoshi Hirose, Yumiko Hori, Kazuaki Maruyama, Daisuke Motooka, Kenji Hata, Shinichiro Tahara, Takahiro Matsui, Satoshi Nojima, Masaharu Kohara, Kyoko Imanaka-Yoshida, Satoru Toyosawa and Eiichi Morii.
DOI:https://doi.org/10.1007/s00428-025-04158-7