―関節疾患に対する新規治療ターゲット“セマフォリン4D”―

口腔分子免疫制御学講座の村上智彦講師、西村理行教授らの研究グループは、神経軸索の伸長や方向性を決定するセマフォリン 4D (Sema4D) ※1が関節軟骨※2に直接作用し、関節リウマチを引き起すメカニズムを世界で初めて明らかにしました。Sema4D は関節の軟骨細胞の炎症応答を活性化させ、関節軟骨破壊を誘導します。
これまで Sema4D は、神経軸索ガイダンスや免疫・骨代謝系での働きが知られていましたが、関節破壊への直接的関与については不明でした。
今回、村上智彦講師らの研究グループは、関節軟骨の破壊を誘導する新規因子を探索する中でSema4D を見出しました。Sema4D による関節軟骨の破壊メカニズムを解析したところ、Sema4D が炎症性サイトカイン※3として関節軟骨細胞に作用し、関節軟骨破壊を直接誘導することを解明しました。さらに、Sema4Dが活性化する細胞内シグナル経路を遮断すると、関節軟骨破壊が抑制されました。これらの発見により、関節リウマチや変形性関節症などの新規治療法への応用が期待されます。

本研究成果は、米国科学誌 「Science Signaling」に、11月2日(水)午前3時(日本時間)に公開されました。

※1 セマフォリン 4D (Sema4D)
神経軸索ガイダンスに加え、免疫系や骨代謝への関与が知られており、関節リウマチ患者の滑液中で上昇していることが報告されている。分泌型と膜貫通型が存在する。
※2 関節軟骨
骨とともに関節を構成する主成分である。特に、関節の最表層にある関節軟骨表層は互いに接することから、関節軟骨表層は運動や滑液からの刺激に常に曝されている。
※3 炎症性サイトカイン
主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞の受容体に結合し、炎症反応を促進する。IL-6 やTNFなどの炎症性サイトカインが知られており、そのシグナルに対する分子標的薬が開発されている。

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