~口蓋裂研究に用いる生物種の選択肢が拡大~

大学院生のXu Linさん(博士課程)、黒坂寛准教授、山城隆教授、東邦大学理学部 鹿島誠講師、花王株式会社安全性科学研究所 田崎純一主任研究員、劉舒捷研究員らの研究グループは、ヒト疾患のモデル生物としてよく使用されるマウスとゼブラフィッシュについて、複数遺伝子がいつ(時間的)どこで(空間的)働くかが似ていること(=時空間的類似性)を発見しました。特に、両種の顎顔面形成時に使用している分子には類似性が認められたことから、口蓋裂など顎顔面形成不全においてゼブラフィッシュ胚のモデル生物としての有用性が証明されました。ヒト疾患モデル生物として一番よく用いられるのはマウスです。しかし、維持コストが比較的高いこともあり、代替法が探索されています。近年ゼブラフィッシュ胚の疾患モデル生物としての有用性が多く報告されていますが、マウス胚とゼブラフィッシュ胚の顎顔面発生の分子生物学的な制御機構の類似性は不明な点が多く、口蓋裂の疾患モデルとして使用可能かどうか議論が残っています。
今回、研究グループは最先端の遺伝学的、情報生物学的手法を用いてマウス胚とゼブラフィッシュ胚の胎生頭部発生時の異なる発生段階における網羅的な遺伝子発現解析を行いました。その結果、マウス口蓋形成に重要な遺伝子を含む68遺伝子がマウス胚とゼブラフィッシュ胚で類似した時空間的な遺伝子発現パターンが存在することを明らかにしました。特に、口蓋裂に関連すると考えられているZfhx4について機能阻害を行うと、マウスでもゼブラフィッシュ胚でも口蓋裂を示すことを発見しました。このことから、ゼブラフィッシュ胚の顎顔面形成不全症におけるモデル生物としての有用性が認められました。

本研究成果は、9月25日(水)、米国科学誌「Developmental Dynamics」に公開されました。