
【卒業年】
2009年
【インタビュー年】
2025年
【現在の所属・職名】
大学院歯学研究科口腔科学専攻
再生歯科補綴学講座
助教
歯学部を志したきっかけは何でしたか?
進路を考える際に、社会に貢献できていることが実感しやすい職業として、医療系の学部を選択しました。細かい作業が得意だったこともあり、自分の器用さが活躍できる場面として歯科医療の道に進むことを決めました。
また、幼少期に歯科医院で歯型を取る治療を受けた際に気分が悪くなった経験があり、型取りの不快感を改善するための研究に従事したいという目標を持って、大阪大学歯学部の受験に臨みました。
実際、歯学部を卒業する頃には光学印象(従来の歯型を取る材料を使わずに口腔内スキャナーを用いてデジタル技術で歯型を取る方法)の技術が登場したため、開発に関わることはありませんでしたが、今では口腔内スキャナーを使用した研究に従事することができています。
他の医療系、理系学部との違いや魅力をどのように感じていましたか?
歯は咀嚼・発音・嚥下などの口腔機能に関わっていることから、歯科医師は患者さんの健康増進に直接関わるやりがいのある職業です。治療が上手くいくと、患者さんから大変感謝されることも大きな魅力の一つです。歯科医師は医療人ではありますが、技術職の面が大きいので、医療知識だけではなく実際の技術力が求められます。技術面はトレーニングにより鍛えることができるため、努力した分だけ良い治療を患者さんに提供することができます。専門性が高く、学びが直接仕事に反映されるため、学生時代や卒後の講義を無駄に感じることはありませんでした。
阪大歯学部での学生生活で、特に印象的だった出来事や学びはありますか?
学生の時に歯を削る実習がありましたが、当時は全く満足のいく内容ではありませんでした。その悔しさを胸に、口腔補綴科(被せ物が専門の医局)に入局し、トレーニングを続けた結果、学外の歯科医師に対しても指導できる技術を身につけることができました。学生時代の苦い経験から、努力することの大切さを学びました。
歯学部での勉強や実習を通じて、どのようにスキルや知識が身についたと感じますか?
補綴という学問を専門にしていますが、歯科補綴学は歯周病やう蝕、外科、矯正治療などその他の専門分野と深い関わりがあります。学生時代に全ての分野を網羅的に学べたことは、現在においても大切な経験となっています。
他学部との交流や課外活動など、歯学部以外の経験で印象的だったことはありますか?
当時は歯学部サッカー部に所属しており、毎年全国各地で開催されるオールデンタル(全日本歯科学生総合体育大会)に参加することが楽しみの一つでした。3回生の時にオールデンタルで優勝できたことは、私のサッカー人生における最大の誇りです。
阪大歯学部に入って良かったと思うことは何ですか?
歯磨きができるようになったことです笑。 阪大歯学部に入るまではろくに歯磨きをしておらず、虫歯がたくさんできていました。
大学に入った時に先輩から、「お前歯が汚いから、俺の予防歯科の担当患者になってくれ」とお願いされ、その頃にきちんとした歯ブラシを学ぶことができました。今は虫歯フリーを維持できています!
現在のお仕事について教えてください。
現在、大阪大学歯学部附属病院口腔補綴科において、クラウン・ブリッジと呼ばれる被せ物を作製し装着したり、口腔インプラント治療(※1)に従事しています。また,顎関節症(※2)に関する治療や大規模研究にも従事しています。最近は西村正宏教授の指導のもと、体性幹細胞をはじめとしたバイオロジー研究にも携わっています。学術大会では講演者として、審美歯科治療や顎関節症に関して専門的な治療法や研究成果を紹介しています。
(※1)歯を失った場所に人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯(上部構造)を装着する治療)
(※2)顎が痛い、顎に音が鳴る、口が開きにくい

現在従事している業務の面白さややりがいを教えてください。
もちろん、患者さん一人一人に対する治療はやりがいがありますし、歯科治療は私自身にとって大好きな業務の一つです。一方で、自身が診ることができる患者数には限界があります。そこで、専門的な治療や研究成果をより多くの人に知っていただくために、学術大会における講演や執筆活動を精力的に行っています。情報発信を通じて多くの患者さんの健康増進に携わることができるようになると、より自分の業務に対して面白さややりがいを実感することができます。

仕事をする上で大切にしていることは何ですか?
どんな仕事でも全力で楽しむことです。小さな仕事でも全力で取り組むことで新たな発見があり、他人からは良い評価が得られます。一方、手を抜くと、悪い結果になって自分に返ってきます。
今後の目標を教えてください。
海外を含め、色々な学術大会に講師として呼んでいただけるような歯科医師になりたいです。研究と臨床の二刀流で、世界中により良い情報を届けられるような医療人になることが目標です。
ご自身が高校生だった頃に感じていた進路選択の悩みや、それを解決した方法を教えてください。
親族に医療関係の職業についている人はいませんでしたが、両親は私の進路に賛成してくれましたし、最後は大好きな祖母が背中を押してくれました。理由を聞いたことはありませんでしたが、祖母は私に歯科医師になることを幼少期から勧めてくれていました。
身近なご家族や教師を含め周りの人の意見は非常に参考になりますので、自分が信頼できる方にご相談いただくことをお勧めします。
阪大歯学部への進学を考えている高校生に、どんな点を特におすすめしますか?
歯科医師はとても素敵な職業であり、人とのつながりを大切にしている方にもってこいの職業です。自分が勉強した分、あるいは技術を磨いた分、良い治療を提供することができるため、実感が湧きやすく、やりがいを感じることができます。
また、歯は人の印象形成に大切な笑顔を構成する組織の一つであり、色彩や空間把握能力を含めアーティスティックな一面も要求されるので、美容や美術に興味がある人にも向いている職業です。
阪大歯学部には各専門分野の一線で活躍されている教員が多数在籍しており、興味深い授業や実習を受けられることも大きな魅力の一つです。