口蓋裂は様々な環境要因や遺伝要因による多因子性遺伝疾患であり、未だ、病態の発生のメカニズムは十分に理解されていません。一方、葉酸は、口蓋裂の発症を予防する可能性が示唆されていますが、その科学的根拠が十分に示されていませんでした。
顎顔面口腔矯正学講座の山城隆教授・犬伏俊博講師らの研究グループは、マウスを用いて、Stat3シグナルの活性化とそれに伴うp63の抑制が口蓋突起の癒合に重要であること、このシグナルの不調が口蓋突起の癒合不全の一因であることをマウスモデルで明らかにしました。さらに、葉酸がStat3の賦活化を介してp63を抑制することで、口蓋突起の癒合不全の解消に寄与することが示されました。
本研究の成果より、口蓋突起癒合部のp63発現の発現制御に影響を及ぼす遺伝要因と環境要因を明らかにすることで、葉酸による口蓋裂のより効率的な個別化予防の実現に寄与することが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Disease Models & Mechanisms」のオンライン版に、2023年10月17日(月)17時(日本時間)に公開されました。
タイトル:“The roles of Jak2/Stat3 signaling in the fusion of the secondary palate”
著者名: Naoki Yoshida, Toshihiro Inubushi, Takumi Hirose, Gozo Aoyama, Hiroshi Kurosaka, Takashi Yamashiro.
DOI:https://doi.org/10.1242/dmm.050085