
このたび、当研究科と大阪大学微生物病研究所の共同研究グループが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路に関して新たな知見を発表しました。
「鼻から感染するのか」「口から感染するのか」という疑問に対し、P3施設※を活用した実験を通じて、そのメカニズムが明らかになりました。
従来、新型コロナウイルスの感染実験は鼻腔へのウイルス投与で行われることが一般的でした。しかし今回の研究では、ウイルスを鼻腔からだけでなく、舌の上や舌の下に投与したところ、唾液腺やその周囲の血管に感染が発生することを確認。さらに、肺や肝臓を調査した結果、ウイルスそのものは検出されないにもかかわらず、鼻腔投与時と同様に、肺や肝臓に炎症反応が起きていることが分かりました。
この研究成果は、感染対策において鼻腔だけでなく口腔、特に唾液腺の感染制御が重要であることを示しており、日頃の口腔ケア(うがいや歯みがき)の徹底が、新型コロナウイルス感染予防において非常に大切であることが改めて確認されました。マスク着用や口腔ケアの重要性を再認識させる結果となった本研究は、新型コロナウイルスの感染経路における口腔を介した感染の重要性を示すものです。
本研究は、五條菜央医員(大阪大学歯学部附属病院・顎口腔機能治療部)、宇佐美悠講師(顎顔面口腔病理学講座)、阪井丘芳教授(顎口腔機能治療学講座)と微生物病研究所メンバーで共同実施されました。本研究成果は、2026年1月23日付で「Oral SARS-CoV-2 inoculation leads to distinct viral distribution compared to nasal inoculation in a Syrian hamster model」と題した論文として、『日本歯科基礎医学会雑誌』(Journal of Oral Biosciences, Volume 68, Issue 1, 2026, 100746)に掲載されました。DOI:https://doi.org/10.1016/j.job.2026.100746
※P3施設は、感染症に関する研究、ワクチンの開発、新しい治療法の確立に欠かせない施設です。例えば、新型コロナウイルスの感染経路や治療薬の効果を調べる研究では、ウイルス拡散のリスクを最小限に抑えながら、安全に実験を行う必要があるため、このような施設が活用されています。