
小児歯科学講座の大川玲奈准教授、仲野和彦教授らの研究グループは、低ホスファターゼ症でみられる歯の症状を再現するモデルマウスを新たに作製し、遺伝子の変異によって歯や歯を支える組織の症状が異なることを明らかにしました。
低ホスファターゼ症は、骨や歯をつくるために重要な「アルカリホスファターゼ」という酵素の働きが弱くなる生まれつきの病気です。主な特徴として、骨が弱くなることや、乳歯が通常より早く抜けることが挙げられます。ただ、その症状の現れ方には個人差があり、骨の症状が強い人もいれば、歯の症状だけが目立つ人もいます。このように、なぜ患者さんによって歯の症状が違うのかは、十分にわかっていませんでした。
今回、研究グループは、患者さんで実際にみられるALPL遺伝子の変化を再現したモデルマウスを作製しました。その結果、比較的軽いタイプのモデルマウスでも、歯を支える歯槽骨の密度が低下し、歯の根の表面にあるセメント質や、歯と骨をつなぐ歯根膜に異常が生じることがわかりました。さらに、別のモデルでは、これらに加えてエナメル質や象牙質の石灰化が弱くなり、象牙質が薄くなるなど、より広い範囲の歯の異常が確認されました。
これらの結果から、低ホスファターゼ症の歯科症状は、単に血液中のアルカリホスファターゼの値だけでなく、ALPL遺伝子にどのような違いがあるかによっても、歯の症状が異なる可能性が示されました。将来的には、歯が抜けることを防ぐ治療、歯槽骨を守る治療、さらに矯正歯科治療を安全に行うための方法を研究するための基盤になることが期待されます。本研究成果は、米国科学誌「JBMR Plus」に、8月25日(火)に公開されました。
タイトル:“Creation and characterization of novel knock-in mouse models of hypophosphatasia”
著者名:Rena Okawa, Marin Ochiai, Hiroshi Kurosaka, Tamami Kadota, Misato Takagi, Yuto Suehiro, Hiroko Okawa, Shuhei Naka, Satoshi Yamaguchi, Shin-ichi Horike, Takiko Daikoku, Atsushi Watanabe, Michiyo Matsumoto-Nakano, Satoshi Imazato, Toshimi Michigami, Keiichi Ozono, Takashi Yamashiro, and Kazuhiko Nakano
DOI:https://doi.org/10.1093/jbmrpl/ziag147
なお、本研究は、2020年に実施した大阪大学未来基金クラウドファンディング基金「低ホスファターゼ症の子どもたちへの先進的な歯科治療法の開発を」の一環として行われ、443名の皆様からいただいた総額1,701万円のご支援を活用して進められました。
患者さんやご家族、そして研究を応援してくださった多くの方々の支援が、低ホスファターゼ症の歯科症状を再現する新たなモデルの開発と新たな治療法の研究基盤の構築という具体的な研究成果につながりました。